大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和33年(行)3号 判決 1958年5月08日

原告 須藤一良

被告 福岡通商産業局長

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「福岡県田川郡川崎町地内福岡県採堀権登録第一五五四号の鉱業権につき、沖本壮太郎名義でなされた施業案の変更並びに追加申請に対し、被告福岡通商産業局長が昭和三十一年十二月四日附をもつてなした認可処分は、これを取消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として

「一、(一) 福岡県田川郡川崎町地内福岡県採堀権登録第一五五四号の鉱業権(以下「本件鉱業権」という)は、もともと原告の単独で有する鉱業権であつたが、原告は、昭和二十九年六月十二日、訴外沖本壮太郎との契約により、原告と右沖本とをその共同鉱業権者としたうえ同人を代表者と定め、同人とともにその旨を被告福岡通商産業局長(以下「被告局長」という。なお、一般的な意味の「通商産業局長」の場合は「通産局長」という。)に届け出で、同月二十五日、その登録(昭和二十九年六月十二日福岡通商産業局受付第一四六七号)を受けた。

(二) しかし、原告と沖本との右契約は無効であり、仮に無効でないとしても、同人がその契約を殆んど履行しなかつたため原告においてこれを解除したので、原告は、昭和三十一年六月中に同人を被告として右鉱業権の取得登録の抹消請求の訴訟を福岡地方裁判所に提起し、現在係争中である。

二、ところで、右沖本は、昭和三十一年六月二十七日、福岡県田川石炭事務所授受第四十四号をもつて、被告局長に対し、本件鉱業権につき、その代表者として施業案の変更並びに追加申請をなし同局長は、同年十二月四日附をもつてこれを認可したが、この認可処分は、次のような理由により違法且つ不当なものである。

(一)  前記のように、原告と沖本との契約は無効であり、仮に無効でないとしても解除されているので、同人は、本件鉱業権につき何らの権利も取得せず勿論その代表者となりうる筈もないのであるが、これらの点は論外として(本件においては違法事由として主張しない)仮に、右契約が有効であつて、原告と沖本とが本件鉱業権の共同鉱業権者で且つ同人が国に対するその代表者となつていたとしても、原告は沖本の前記申請については同意を与えていないのみならず、かえつて、被告局長に対して昭和三十一年四月五日附をもつて「鉱業法第四十四条第四項に関する異議申請書」と題する書面を提出し、更に、同年七月二十三日附をもつて「陳述書」と題する書面を提出して、右「異議申請書」の趣旨を明確にするとともにこれを補充し、「原告は沖本の施業案の変更並びに追加申請に対してはあくまでも反対であり、同人に対し右のような申請をなす権限を与えていない。」旨の意思表示をなしていたのである。

(二)  しかして、一旦共同鉱業権者の国に対する代表者として届け出られた者でも、右のように後日他の共同鉱業権者の一員から「その者が代表者たることには異議がある」旨の意思表示が通産局長に対してなされたときは、その者は代表者たる地位を解任されたものというべく、以後その代表権は消滅するものと解すべきである。その理由は次のとおりである。

(1)  鉱業法第四十四条第五項は「共同鉱業権者は、組合契約をしたものとみなす。」と規定しているところ、民法の「組合」の規定中には「組合代表(代理)」に関する明確な規定が存しないので、その代表者は、組合員中の特定の者のみが代表権を有する場合もあり、組合員各自が代表権を有する場合もあり、また共同代表の場合もあるなど種々の態様がありうるのに拘らず、同法第四十四条第一項第四項、同法施行規則第十九条第一項第二項第四項は共同鉱業権者の国に対する代表者については、共同鉱業権者のうちの一人を代表者と定め、これを全員が署名押印した代表者選定の届書をもつて(またはこれに代え、全員が署名押印した登録税納付書又は移転登録申請書中に代表者の記載をして)、通産局長に届け出なければならないと規定し、また代表者を変更する場合にも、同じく全員の署名捺印ある書面による届出がなければ、その効力を生じないものと定めている。このように法令は特に国に対する代表者の制度を設け、その選定には届書に共同鉱業権者全員が署名押印することを要件としているのである。

(2)  右のように、国に対する代表権の取得(代表者の選定届出)ないし変更につき共同鉱業権者全員の署名押印ある届書を必要としたのは、国に対する代表者は鉱業権に重大な影響を及ぼすような行為をもなしうるものであるのに拘らず、国は、共同鉱業権者中の誰が代表者であるかについて実質的な審査をせずに、単なる届出によつてこれを定めようとするものであつて、万一にも共同鉱業権者間に紛争があり代表権につき疑のあるような者を代表者とするが如きことを避けんがために外ならない(即ち国に対する代表に関する限りにおいては、民法の組合の規定は排除せられるわけである)。

かように、国に対する代表権の取得につき共同鉱業者全員の署名押印を要求した所以を考えると、当初全員の署名押印ある届出によつて代表権を取得した者でも、後日、共同鉱業権者の一員が通産局長に対し「もはやその者を代表者とすることには反対である」旨、即ち「その者が代表者たることには異議がある」旨の意思表示をなしたときは、その者は代表者たる地位を解任され、以後その代表権は消滅するものと解すべきである。すなわち、この場合には、共同鉱業権者全員の一致が破れたものであつて、その内部に紛争があり代表権が疑を生じたのであるから、全員の署名押印を要求した前記の立法趣旨に鑑み、かかる者を代表者としておく訳にゆかないからである。

(3)  また、実際上も、右のように解しなければ甚だ不都合な結果を生ずる。たとえば、当初組合契約にもとづき多数決によつて甲なる者が国に対する代表者に選定され、全員の署名押印をえて届出がなされたが、その後多数決によつて国に対する代表者が乙なる者に変更されたにも拘らず、甲又はその一派の者が代表者変更の届書に署名押印しない場合の如きである。この場合、代表者変更の届書には全員の署名押印がないので、甲から乙への変更は国に対して効力がないが(鉱業法第四十四条第三項、同法施行規則第十九条第三項。以下括弧中の「法」とは鉱業法を「規則」とは同法施行規則を示す)、さればとて、そのまま何時までも甲が代表者としてとどまるということは不都合であり、甲の反対派の利益は甲及びその一派から蹂躙されることとなる。殊に本件のように、唯二人の共同鉱業権者が不和となつた場合、当初適法に選定された代表者が他の一名の反対があるのに依然として代表権を失わないものとすれば、その反対者の利益は守るに由ないものとなる。

それ故、共同鉱業権者の一員が通産局長に対し「さきに代表者として届け出られている者がなおも代表者たることには異議がある」旨の意思表示をなしたときは、その代表者たる者はその地位を解任され、以後その代表権は消滅するものと解するのが相当である。

(三)  従つて、前記沖本壮太郎は、一旦は本件鉱業権の共同鉱業権者の代表者として被告局長に届け出られ、国に対する代表者となつたものであるとしても、前記のように原告が同局長に対し昭和三十一年四月五日附をもつて「異議申請書」を、更に同年七月二十三日附をもつて「陳述書」を提出したことによつて、同人は昭和三十一年四月五日(遅くとも同年七月二十三日)には右代表者たる地位を解任され、以後その代表権を失つていたものといわなければならない。それ故、被告局長は、沖本のなした施業案の変更並びに追加申請に対してはこれを認可すべきではなかつたのである。それにも拘らず、同局長は、原告の異議を無視して、同年十二月四日附をもつて、これを認可したのであるから、この認可処分は違法且つ不当なものであるといわなければならない。

三、そこで、原告は、昭和三十一年十二月三十一日附をもつて、通商産業大臣に対し異議の申立をなしたが、同大臣は、昭和三十三年一月七日附をもつて原告の異議の申立を棄却する旨の決定をなした。

よつて、原告は、被告局長の前記認可処分の取消を求める。」

と述べた。(立証省略)

被告指定代理人は、主文と同旨の判決を求め、答弁として

「一、請求原因一の(一)の事実を認めるが、同(二)の事実は知らない。

二、(一) 請求原因二の各事実のうち、沖本壮太郎が昭和三十一年六月二十七日被告局長に対し、本件鉱業権につき施業案の変更並びに追加申請をなし、同局長が同年十二月四日附をもつてこれを認可したこと、及び原告が同局長に対し、同年四月五日附をもつて「鉱業法第四十四条第四項に関する異議申請書」と題する書面を、更に同年七月二十三日附をもつて「陳述書」と題する書面を提出したことは認める。

(二)  本件鉱業権の共同鉱業権者の国に対する代表者は、右施業案の変更等の申請当時も、またその認可処分当時も、沖本壮太郎であつたから、被告局長の認可処分には原告主張のよう違法乃至は不当はない。

(1)  そもそも、鉱業法上共同鉱業権者が必ず国に対する代表者を設けなければならない(法第四十四条第一項)とする趣旨は、国が共同鉱業権者中の誰が代表者であるかについて実質的な審査をすることを避け、共同鉱業権者全員からその署名押印ある届書をもつて届け出られた者(規則第十九条第一項第二項)を国に対する代表者として取扱い、共同鉱業権者から国に対してなす手続その他の行為又は国が共同鉱業権者に対してなす行政行為等を簡易且つ明確になしうるようにするためのものであつて、これは民法上の「組合」における、その対外的な代理人と無関係に鉱業法上特に設けられたものである。従つて、その代表者の選定、変更等は、すべて鉱業法並びにその関係法令に定められた手続に遵うべきものであつて、右手続によらないものはその効力を生じないのである(法第四十四条第一項、第三項規則第十九条)。

ところで、国に対する代表者の解任については、鉱業法並びにその関係法令には何ら直接規定するところはないのであるが、その性質よりして当然代表者の変更に関する規定(法第四十四条第三項規則第十九条第三項)が準用され、共同鉱業権者全員が署名押印した代表者解任の届書を通産局長に提出して届け出なければ、その効力を生じないものといわなければならない。

(2)  原告は「一旦国に対する代表権を取得した者でも、後日共同鉱業権者の一員が通産局長に対し、その者が代表者たることには異議がある旨の意思表示をなしたときは、その者は代表者たる地位を解任され、以後その代表権は消滅すると解すべきである。」と主張するが、これは代表者の選定と、選定された代表者の代表権の存続とを混同した見解である。

共同鉱業権者全員の一致によつて選定のうえ、届け出られた代表者の代表権は、適式な手続により同人が解任又は変更せられるまで存続するのであつて、その間において共同鉱業権者の一員より選定の意思表示が撤回され、その旨通産局長に届出がなされたとしても、その代表者の代表権は何ら影響を受けないのである。即ち、法は国に対する代表権の取得(代表者の選定届出)には共同鉱業権者全員の一致を要求しているけれども、その代表権の存続には全員の一致を要求していないのであつて、むしろそれを喪失せしめることに全員の一致を要求しているのである。

(3)  従つて、原告が被告局長に対してなした前記「沖本が代表者たることには異議がある」旨の意思表示は、適式な代表者解任の届出と解することはできないから、本件鉱業権の共同鉱業権者の国に対する代表者は、施業案の変更等の申請当時は勿論、これに対する被告局長の認可処分当時も沖本壮太郎であり、従つて被告局長の認可処分には何等違法乃至不当はない。

三、「請求原因三の事実を認める。」

と述べた。(立証省略)

理由

一、本件鉱業権がもともと原告の単独で有する鉱業権であつたこと及び原告が昭和二十九年六月十二日訴外沖本壮太郎との契約により、原告と右沖本とをその共同鉱業権者としたうえ同人を代表者と定め、同人とともにその旨を被告局長に届け出で、同月二十五日、その登録(昭和二十九年六月十二日福岡通商産業局受付第一四六七号)を受けたことについては当事者間に争がない。従つて沖本は、右登録のなされた昭和二十九年六月二十五日からは原告とともに本件鉱業権の共同鉱業権者で、且つ国に対する代表者となつたものといわなければならない。

そして、沖本が昭和三十一年六月二十七日、福岡県田川石炭事務所授受第四十四号をもつて被告局長に対し、本件鉱業権につきその代表者として施業案の変更並びに追加申請をなしたところ、同局長は同年十二月四日附をもつてこれを認可したことについても当事者間に争がない。

二、ところで、原告は「被告局長のなした右認可処分は、解任により代表権を失つた沖本の申請にもとづいてなされた違法且つ不当な処分である。」旨主張するので、以下判断する。

(一)  原告が被告局長に対して昭和三十一年四月五日附をもつて「鉱業法第四十四条第四項に関する異議申請書」と題する書面を、更に同年七月二十三日附をもつて「陳述書」と題する書面を提出したことは当事者間に争がなく、これらの書面によつて、原告が同局長に対し「原告は、沖本の施業案の変更並びに追加申請に対してはあくまでも反対であり、同人に対し、右のような申請をなす権限を与えていない。」旨の意思表示をなしたものであることについては、被告局長において明らかに争わないところである。

(二)  そこで、共同鉱業権者の国に対する代表者として届け出られた者でも、右のように他の共同鉱業権者の一員から「その者が代表者たることには異議がある」旨の意思表示が通産局長に対してなされたときは、その者は国に対する関係において代表者たる地位を解任され、以後その代表権は消滅する、といえるかどうかについて考えてみる。

(1)  鉱業法第四十四条第五項は「共同鉱業権者は、組合契約をしたものとみなす。」と規定しているので、共同鉱業権者相互の法律関係は組合とみなされるのであるが、同法第四十四条第一項、第四項、同法施行規則第十九条第一項、第二項、第四項によれば、共同鉱業権者の国に対する代表者については、共同鉱業権者のうちの一人を代表者と定め、共同鉱業出願が許可されて共同鉱業権者となつた場合には登録税納付書とともに、また鉱業権の移転により共同鉱業権者となつた場合には移転登録の申請書とともに、全員が署名押印した代表者選定の届書(または、これに代え全員が署名押印した登録税納付書又は移転登録申請書に代表者を表示して)を通産局長に提出して届け出なければならないこととされている。これは国が共同鉱業権者中の誰が代表者であるかについて実質的な審査をすることを避けるためであると解されるが、他方、同法第四十四条第二項は、右代表者選定の届出がないときは、通産局長が代表者を指定する旨を規定している。

このように、共同鉱業権者については、代表者の選定、或は指定によつて必ず国に対する代表者を置かなければならないのであるが、その趣旨は、国が命令通知等を発する場合に各共同鉱業権者にこれをなすのは煩にたえないのみならず、命令通知の到達の日時の決定についてなどその法律関係を複雑にし、共同鉱業権者にとつても不利不便であるからそれを避けんがためである。即ち、国に対する代表者の制度は、国と共同鉱業権者との間の便宣のために設けられた制度で、民法上の「組合」における、その対外的な代理人と無関係に鉱業法上特に設けられたものであると解せられる。

それ故、その代表者の選定、変更等は、すべて鉱業法並びにその関係法令に定められた手続に遵うべきものであつて、その手続によらないものは効力を生じないのである(法第四十四条第一項、第三項、規則第十九条)。

(2)  ところで、国に対する代表者の変更については規定があるが(法第四十四条第三項、規則第十九条第三項)共同鉱業権者の或る者による代表者の解任については鉱業法並びにその関係法令に直接の規定がない。

思うに、前記のように国に対する代表者の選定には共同鉱業権者全員の署名押印ある届書の提出が要件となつているけれども、共同鉱業権者間の紛争等によつて代表者選定の届出がなされない場合には、通産局長が代表者を指定するのであるから、代表者たる者は、常に共同鉱業権者の総意にもとずきその代表権を取得したものであるということはできないこと、また、代表者が国に対してなした手続その他の行為は共同鉱業権者全員でなしたものとみなされるとともに、国が代表者に対してなした手続その他の行為は共同鉱業権者全員に対して効力を有するのであるが、代表者は、あらゆる場合において共同鉱業権者を代表するものではないこと、即ち一般に全員の利益になる事項は、代表者によつてなされうるけれども、試堀権の存続期間延長の申請(規則第二十条第二項)鉱業権の変更の出願(規則様式第五、第七、第八、第九の備考)、租鉱権の設定及び変更の申請(規則様式第十、第十一の備考)などについては、その法律効果の重要性に鑑み、その代表権を制限され、なお共同鉱業権者全員でこれをなすべきものとされていること、このことは、たとえ選定された代表者であつても後日共同鉱業権者中にこれと意見を異にする者が生じた際に、代表者に反対する者達の利益を保護するとともに、反面法は代表者の代表権の存続には共同鉱業権者全員の一致を必ずしも要求していないことを意味すると解されること、などを考慮すると、国に対する代表者の解任については、単に共同鉱業権者の一員が通産局長に対し解任の意思表示をなしたのみでは足らず、代表者変更の規定を準用してその手続と同様に、共同鉱業権者全員が署名押印した代表者解任の届書を通産局長に提出して届け出なければその効力を生じないと解するのが相当である(この解任行為は、代表者の辞任と代表者以外の者の代表者に対する解任ないし辞任の容認との合致したものとして理解すべきであろう)。

(3)  原告は「共同鉱業権者の一員が代表者たることに異議がある旨の意思表示をしたときには、代表者は解任され以後その代表権は消滅すると解しなければ、実際上も不都合な結果を招来する。」と主張するのであるが、前記のように、法は特定の重要な事項については代表者があるにかかわらず共同鉱業権者全員の同意を要求して全員の利益を保護しているのであるし、また原告主張の如く、共同鉱業権者間に紛争を生じその一員が通産局長に対し、代表者たることに異議がある旨の意思表示をなした場合、これによつて代表者が解任されたものと解するならば代表者は絶えず解任の危険にさらされ、国に対する代表者の地位、従つて国と代表者との関係も不安定となるが、このことが代表者設置の趣旨に反することは明らかである。なおこの場合、新たに代表者を選定すべきこととなるが、右のような事情下にあつては共同鉱業権者全員の一致による代表者の選定届出はおよそ望めないので通産局長の指定ということも考えられるのであるが、指定された者に反対する者の存在は当然予想されるから、これが通産局長に対し代表者たることには異議がある旨の意思表示をすると、これまた解任されることになり、結局指定、解任の悪循環を繰り返すこととなろう。

以上の理は、本件のごとく共同鉱業権者が二人で、そのうちの一人が代表者である場合にも不都合なく適用されるのであつて、要するに原告の見解には左袒できないのである。

(三)  従つて、原告が被告局長に対してなした「沖本の施業案の変更等の申請にはあくまでも反対である」旨換言すれば「沖本が代表者たることには異議がある」旨の意思表示は、いずれも適式な解任の届出と解することはできないから、これによつて沖本壮太郎の代表権は何らの影響も受けず、同人は、施業案の変更の申請当時も、また被告局長の認可処分当時も、本件鉱業権の共同鉱業権者の国に対する代表者であつたといわなければならない。

なおまた、施業案の変更並びに追加申請は、共同鉱業権者の国に対する代表者が単独でなしうる行為であつて、共同鉱業権者全員の同意を要するものではないから、沖本の申請後、原告が被告局長に対し「沖本の申請には反対である」旨を届け出ていたとしても、これによつてその申請が瑕疵があるものとなつたと解することもできないのである。

それ故、沖本壮太郎の申請にもとづく被告局長の本件認可処分には何等違法乃至不当な点はないというべきである。

三、よつて、被告局長の本件認可処分の違法乃至不当を主張してその取消を求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小野謙次郎 藤野英一 竪山真一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例